恩師との別れ|金城監督との別れを振り返ってみる

人生の学び

金城監督の話しをもう少し。
僕は、監督のことを思うと話が止まらないのだ。すいません。

2017年11月16日金城眞吉監督が他界した。

1度目の危機:そう簡単には終わらない監督の生命力

亡くなる数年前から、監督がガンに罹患していることは、聞いていた。

ある日、監督の家族から電話があり、
「ケン坊(僕の愛称)、監督は、もう長くないから、今すぐに病院へ来い!」とのことだった。
監督は、痩せ細り、もう長くないとすぐにわかった。
OBの多くが訪ねてきて、最後に挨拶をしたいという感じだった。
ボクシング関係者なども多くお見舞いにきていた。

そのあと、しばらく容態が悪化し、深夜に再度病院に呼ばれた。
もう監督とお別れか。
涙が混み上げてきた。
思い出がたくさんある。
「息を吹き返しました。窮地を脱しました」監督の長女の智江さんが言う。ホッとした。

2度目の危機:カウント9でも負けない監督の生命力

それからしばらく期間が経った。

監督の家族から電話があり、
「ケン坊、監督は、もう長くないから、今すぐに病院へ来い!」とのことだった。(2回目←)

「今回は、本当に最後になる、現在集中治療室にいる」と。病院で、元日本チャンピオンの某先輩と会った。警備員に「俺のオヤジはどこにいる?」と聞いて、警備員から「ここは、面会謝絶です」拒否された。これで素直に聞かないのがボクサーだ。人ことを簡単に受けれるのなら、誰もチャンピオンになれない。

ガージュー(我が強い)というか、常識の通じない猛獣だ。絶対言う事を聞かない 絶対、集中治療室へ行くつもりだ。「最後に会いたいのだ」と言う。こうなるとヤンチャなボクサーを止められない。

結局、警備員を退けて、集中治療室へ入って言った。僕もひょっこりそのあとをついて行った。
監督が、ベッドで横になり目を閉じていた。
やはり監督は凄いと思った。
そこからもまた、持ち返したのだ。

ボクシングは、倒された場合10秒以内に立ち上がらないと負けると言うルールだ。
カウント10を数えられると終わりなのだ。
今の監督は、人生の終期として、カウント9くらいまでいった状況だ。
あと、1秒で、終わり。 そこから、立ち上がった。
僕は凄い生命力だと思ってやはり監督だ!と思った。ただでは死なない!

横にいた先輩が笑ってこう言った。
「監督、しつこいな〜」(^ ^)

その隣にいる後輩がこう言った。
「僕らのオヤジ(監督)は、チューバー(強い)ですよ」

その隣にいる先輩がこう言った。
「ワッター(我々に)になんか伝えているのか」

僕らが尊敬する監督は、そうなのだ、簡単には死なないのだ。
人生の死期においても、最後まで10カウントを聞かないのだ。
その場は、解散した。

3度目の危機:監督が最期まで待っていたのは…?

数日後、監督の家族から電話があり、
「ケン坊、監督は、もう長くないから、今すぐに病院へ来い!」とのことだった。(3回目←)

急いで病院へ駆けつけた。
もう、息をするのがやっとの状況だった。
それでも、最後までしぶとい。
生きている!

何度倒れても、リングのロープに持たれ、ロープ掴んでも立ってるような状況に見えた。ボクサー根性だ。

でも、しっかりと息をしている。お腹は動いている。心電図も波を打っている。
それからしばらく時間が経った。 その時、エレベータが開く音がした。「5階です。チーン」 そして、迎えに行った先輩がこう言った。

「監督、具志堅さん間に合いました」 具志堅先輩が病室に入ってきた。

そこから最後の会話がなされた。

「カントク、グシケンですよ!起きてください」
「カントク、目を覚ましてください。グシケンですよ」

そうやり取りして、具志堅先輩の熱い思いのこもった情熱的な激励に監督の身体は、2回、3回、振られた。

「カントク、グシケンですよ!起きてください」
「カントク、目を覚ましてください。グシケンですよ」

監督の身体は、再度5回、6回、振られた。
そして、 この途中で監督は息を引き取った。

ヤンチャなボクサー達の涙が落ちる音がした。
強面のおじさんが赤ん坊のように泣いていた。

そして、僕も、大泣きした。
涙が出すぎて、脱水症状になるくらいに。

こんな声があった。そして、僕らも思った。

「監督最後、具志堅さん待っていたんだね」と、、、

ここで監督は、人生の10カウントを聞いた。

追記:監督が息を引き取った後、後輩との会話

仲良しの後輩に55年5月5日5時に生まれた翁長吾央とういうボクサーがいる。
全国高校タイトル3冠王で監督の好きなボクサーだ。

(日高)「監督は、どこで息を引き取ったかな。具志堅先輩来た時は、確かに息していたよね」

(翁長)「最後、具志堅先輩は監督への愛情がすごかったですね。『カントク、グシケンですよ!起きてください」「カントク、目を覚ましてください。グシケンですよ」って。

(日高)「監督、はじめ、ぐぅって反応したでしょ」

(翁長)「息、してましたよ。監督、具志堅さんに、何か言おうとしましたよね」

(日高)「そうだよね・・・・」

終わりに

「監督は、一番の愛弟子の胸の中で、人生の10カウントを聞いた」
「でも、僕らの中では、監督の10カウントは絶対に聞かない」 

僕は、ここで決意した。 僕らは、絶対に監督を忘れない。 だから、監督の生涯を映画にしようと。